サバイバルイレブンの中で起きた兄弟の物語。
地上に落ちたデビルガンダムが世界中で猛威を振るうも、その情報は隠されていた。DGサインを辿ってネオジャパンのドモンとレインは古都キョウトへ到着する。そこで目にしたのは二度に渡る激戦によって出来た戦場の痕であった。デビルガンダムと東方不敗によってその中心で出会うこととなった二人の兄は……。
英雄変生
第1話
●プロローグ
〜ネオエジプトに広がる砂漠〜
砂嵐に埋まりつつあるファラオガンダム
〜雨上がりのネオトルコ〜
その陽光を受けるミナレットガンダムの残骸
それらを背に進むドモンとレイン
ストーカー「さて皆さん、今回もまた、当時にお話しできなかった物語をお伝えする事にいたしましょう………
それは、ネオエジプトで初めてデビルガンダムの痕跡と遭遇し、ネオトルコの地でレインの思い出を切り裂くことで開かれた先の事です。
今回の舞台はネオジャパンの古都キョウト………
どうやらデビルガンダムはこの地を通過し、東へとその進路を向かわせたようなのです。
ですが………この地には誰も想像できなかった危機と、ある真実が隠されていたのです………
それこそが、このガンダムファイトの中で最も悲壮な運命を背負った、《ある英雄》の物語だったのです………
題して《英雄変生》
………それは果たして?………」
キョウトの情景が広がる
《英雄変生》
●ネオジャパンコロニー
ガンダムファイト委員会司令部・ウルベ少佐専用オフィス
その中で密談をしているウルベとミカムラ
ミカムラ「やはりだめですな………娘とは連絡がとれません」
ウルベ「そうですか………だが、ドモン君からの最後の連絡ではキョウトを目指す……そう言ってたんですね?」
ミカムラ「はい……DGサインがネオトルコで採取されましたが、その移動痕跡を計測した結果だと………」
ウルベ「それ以降はこちらからの追跡でも捉えていない………」
ミカムラ「ですが、報告通りならそろそろキョウトへ到着する頃かと………」
ウルベ「キョウトか………できれば遠慮したかった地だな………」
ミカムラ「はい………」
ウルベの不安な気持ちを察するミカムラ
そこへ、レーダー反応のサインが入る
ミカムラ「少佐!キョウトからの通信が繋がりましたぞ」
ウルベ「そうか!で?二人は何か発見を?」
ミカムラ「それが………」
レーダーの反応に困惑するミカムラ
ミカムラ「既に戦闘状態に!?」
ウルベ「なんだって?!それじゃデビルガンダムと?!」
ミカムラ「いや!そうでは………ないようです………」
困惑しつつレーダーサインの識別を急ぐミカムラ
ミカムラ「このサインは………DG反応でもドモン君のものでもなく………」
ウルベ「それでは???」
ミカムラ「!!分かりました!これは………」
レーダーサインのデータがある一国の名前を表示する
ミカムラ「これは、ネオドイツのものです!!」
ウルベ「何?!」
驚くウルベ
●キョウト
荒廃したキョウトの地に轟く砲撃音
その着弾により、轟音と共に破壊される町
その中から、砂塵を巻き上げホバー走行するネオドイツの大戦艦《ビスマルク》
司令官「撃て!!!撃てぇえええいいいいい!!!!!」
激震するブリッジで指示を出す司令官
連射する対戦車砲
その着弾が街を爆煙に包んでいく
司令官「サポートガンダム兵出撃!!」
サポート兵「一番機了解!!」
「二番機了解!!」
「三番機出撃!!」
戦艦の中から飛び出すサポート用の兵士ガンダム
サポート兵「全機散開!!目標、見つけ次第確保せよ!」
司令官「敵への多少の損害は許可する!!」
サポート兵「了解!!敵への実弾発砲の許可を得た!」
「戦闘態勢!ランク!ノイン!!」
発砲体勢を取る兵士ガンダム
だが次の瞬間、背後に気配を察知する一番機
一番機「!?」
間髪入れずに首をへし折られる一番機
二番機「どうした!?一番機!!」
咄嗟に気づく二番機が銃を構え発射
しかし、同時に銃身が真っ二つにされ、爆発
同時にナイフを構えるが、腕を掴まれ、そのまま肩からもぎ千切られてしまう
二番機「うわぁああああ!!!!!」
小さな爆発と共に、膝を突き倒れる二番機
三番機「ど………どこだ??どこにいる???」
ビビりながら乱射する三番機
瞬間、声と共に羽交締めにされる
声「動くな!!」
三番機「わ、わかった………」
背後からの囁きに震える三番機
そのまま銃口を戦艦に向けられ、乱射させられる
司令官「なんと!同士討ちに!!」
三番機の乱射銃弾を受ける大戦艦
銃弾がブリッジをかすめる
司令官「ええい!ファイターの分際で、我らサポートクルーに歯向かうなど!!なんという奴だ!!」
戦艦からの対戦車砲の流れ弾が当たり、爆発する三番機
司令官「こうなれば!!全軍進めぇぇえ!!!!」
司令官の命令と共に空より降り注ぐ一団
一個大隊の兵士ガンダムのパラシュート部隊である
兵士たち「進めぇえええ!!!!!!!」
全軍整列状態で前進する兵士ガンダムたち
その前方の砂塵の中に浮かび上がるシルエット
ガンダムシュピーゲルである
その姿は軍服シールドを身につけ、一基の棺桶を引きずったガンダムであり、その顔は覆面で素顔を隠したものになっている
シュピーゲル「………………」
その中でシンクロして構えるガンダムファイター
《シュバルツ・ブルーダー》
更に満身創痍のその姿からは幽鬼の気配が放たれている
兵士たち「かかれぇぇえええ!!!!」
一斉にシュピーゲルに襲い掛かる兵士たち
それに対して棺桶を開き、機銃を取り出し連射するシュピーゲル
次々と撃ち抜かれる兵士ガンダム
隙を狙ってシュピーゲルの頭上へ飛び上がる兵士ガンダム
それを両腕のブレードで受け、一撃で斬り散らすシュピーゲル
続けてアイアンネットで兵士群を捉え、引き摺り回し、敵にぶつけ回し、無数のメッサーグランツの爆弾クナイを放ち進む
そして最後はシュトゥルム・ウント・ドランクで巨大な駒となり、その高速回転の刃で次々と兵士たちを切り飛ばしていく
その地獄の情景に焦り、砲撃手席に着く司令官
司令官「777ミリ砲!全門砲撃!!目標!!」
前方に全砲門が狙いをつける
司令官「我がネオドイツ、《ガンダムシュピーゲル》!!」
クルー「ですが、それでは兵士たちも巻き添えに!!それに自国のファイターを失う訳には!!」
司令官「かまわん!!後のことはどうとでもする!!今は我々の身の安全が先だ!!
撃て!!撃てぇぇえええ!!!!」
司令官の号令で連射する777ミリ砲
[!!!!!!!!!!!!]
[!!!!!!!!!!!!]
[!!!!!!!!!!!!]
連続して着弾する砲弾
その爆炎に包まれるシュピーゲル
司令官「やったか!!」
爆炎の中に姿を消したシュピーゲルの姿を追う司令官
だが次の瞬間、突然シュピーゲルが眼前に現れる
司令官「うぁぁああああああ!!!!!」
ブリッジに取り付くシュピーゲル
ブルーダー「よくも!!よくも私を騙してくれたなぁぁあああ!!!!!」
ブリッジに向かって拳を構えるブルーダー
だがその瞬間、最悪の恐怖が二人を襲う
ブルーダー「!?!」
司令官「!?!」
突然地中から大地を割って現れる巨大な影
その異形のボディが持つ両手の鋏が大戦艦を串刺しにし、残っていた兵士ガンダムを一蹴する
ブルーダー「な、なんだこいつは!!!」
恐怖に固まるブルーダー
巨大な影は《デビルガンダム》第一形態である
更に、その視線が捉えたのは、デビルガンダムの開いたままのコクピットの中にいる一人の男《キョウジ・カッシュ》の姿であった
ブルーダー「あの男は??」
まるで意識が無い状態のキョウジ
キョウジ「………………」
ブルーダー「生きているのか??」
その虚ろな様子に訝しげに見るブルーダー
声「ふふ………貴様、あれを見たのか………なら生かしてはおけんな」
ブルーダー「!?」
声のほうを見ると、デビルガンダムの肩に一人の男が立っている
ブルーダー「お………お前は………まさか?!!」
男「そのまさかよ!!」
姿を見せる男
《東方不敗》である
●キョウト・郊外
キョウト中に響き渡る大爆発の轟音
ドモン「!?」
レイン「今のは??」
驚く二人
見ると、遠方の中心地が爆炎に包まれている
レイン「まさか………デビルガンダム??」
ドモン「ここじゃわからない!!とにかく行ってみよう!!」
レイン「ええ!!」
コアランダーに乗り込み中心地を目指す二人
●キョウト中心地
広がる大爆発の跡
ドモン「ひどい………これは一体、何があったんだ………?」
レイン「見て………この残骸………」
爆発跡に残る兵士ガンダムの残骸
ドモン「どこの国のガンダムだ………」
レイン「わからない………でも、ガンダムファイトじゃなく、まるで殺し合いのような戦場の跡だわ………」
見上げるレイン
破壊されたビスマルクの残骸がそびえ立っている
通信「聞こえるか………レ………イン………聞こえるか………」
通信はミカムラからのものである
レイン「お父様よ!よかった通信が繋がったわ」
通信機を操作し、音声を明瞭にするレイン
レイン「聞こえる?」
ミカムラ(通信)「良かった!心配していたよレイン」
レイン「ええ、ちょっとした磁気嵐みたいだったの、でもその原因かわからないけど、ちょっと変なの」
ミカムラ(通信)「うむ、こちらでも感知している、それで、映像は送れるか??」
レイン「ええ………お父様も見てみて」
映像を送るレイン
× × ×
コロニーのウルベオフィス
スクリーンに映るキョウトの惨状
ウルベ「これはひどいな………」
ミカムラ「既に廃棄されたような地区ではありますが、やはり我々の国の一部」
ウルベ「しかも、かつてはその美を讃えられたキョウトだ………」
ミカムラ「大切な美術品や建築はこのコロニーへと移築してあるので………その辺はまあ………うん??」
ある残骸に目を止めるミカムラ
ミカムラ「これは………」
ビスマルクの一部をクローズアップするミカムラ
ミカムラ「まるで何かに喰われたような………」
その瞬間、DGの感知を知らせるサインが出る
ミカムラ「DGサイン!!間違いない、微弱だがデビルガンダムがそこを通過したのは確かだ!!」
ウルベ「それで、向かった方向は?」
乗り出しスクリーンのキョウトを見るウルベ
× × ×
ミカムラ(通信)「どうやら東へ………!!」
ミカムラの通信に東を見るドモン
ドモン「………」
はるか東の空に紅い暗雲が渦巻いている
レイン「とにかく後を追ってみるわ、お父様」
ミカムラ(通信)「いや待て、キョウトにいるのは丁度いい、そこに補給基地がある。そこでデビルガンダムに対抗する準備をするんだ」
レイン「そうね、確かキヨミズだったわね、ありがとう」
× × ×
ミカムラ「うむ、くれぐれも気をつけるんだぞ」
肩を落としつつ通信を切るミカムラ
その姿に声をかけるウルベ
ウルベ「できれば補給物資を使用しないで済むのがいい………そんな親心ですかな?」
ミカムラ「あ………え、ええ………」
ウルベ「まぁ、いずれにせよ補給は後々のためにもなる。それに、私にとってもキョウトからは早く離れてもらいたいものだ………」
苦笑いのウルベ
× × ×
キヨミズへ向かうドモンとレイン
その様子を隠れてみている男
ブルーダーである
ブルーダー「あれはネオジャパンのファイターだ………確か現在のキング・オブ・ハート………そして、流派東方不敗の使い手………」
怪しむブルーダー
ブルーダー「どういうことだ?確かシャッフル同盟はガンダムファイトに不介入のはず………なのに、前回に続き二人までも………」
状況を考え込むブルーダー
× × ×
〜回想〜
東方不敗と対峙するブルーダー
ブルーダー「お前は東方不敗………前回のガンダムファイト優勝者!!」
東方不敗「いかにも!」
不敵に笑う東方不敗
ブルーダー「お前の今回の参加は聞いている!だが、そのガンダムは一体何だ!?お前はクーロンガンダムで参加だと聞いているぞ!!仮にその巨大なガンダムを使っていたとしても、中に入っている青年は誰だ?!」
朦朧としたキョウジを指し示すブルーダー
ブルーダー「ガンダムファイトに参加できるガンダムは勿論、ファイターも各国一人のはず!!」
東方不敗を問い詰めるブルーダー
東方不敗「ふん!!ゴタゴタとうるさい奴だ………そういうお前こそ、そのコートを脱いで正体を見せろ!!」
手刀を奮う東方不敗
その突風でシュピーゲルのコートを切り刻む
ブルーダー「むん!!」
その瞬間、全身を透明にするブルーダー
コートの切れ端だけが地面に落ちる
東方不敗「ほぉ!ステルスコートか?!」
面白がる東方不敗
東方不敗「だが、ワシには通じんぞ!!来い!!クーロン!!」
大空に向かって叫ぶ東方不敗
同時に、頭上から落下する黒い塊
ブルーダー「何?!」
ブルーダーの眼前に落下し地面に突き刺さる塊
クーロン 「!!!!!!!」
その塊が咆哮と共に全身を現す
クーロンガンダムである
ブルーダー「これが前大会優勝のクーロンガンダム!」
東方不敗「その通り!!冥土の土産に我が流派の絶技を見せてくれるわ!!!!!」
クーロンガンダムの全身から現れる12体の分身
東方不敗「十二王方牌大車併!!」
12体の分身が次々と透明のシュピーゲルに襲い掛かる
ブルーダー「これはたまらん!!」
飛び逃げつつ、次々に分身クーロンを叩き落とすシュピーゲル
その爆炎の中に浮かび上がるシュピーゲルのシルエット
東方不敗「そこか!!」
12体の分身がシュピーゲルの周囲を固める
東方不敗「さぁ、これでどこに隠れても一目瞭然!」
構えるクーロンガンダム
東方不敗「帰山笑紅塵!今、止めを………………!!」
手刀をくりだそうとする瞬間、気配に気づく東方不敗
見ると、シュピーゲルが背後を取り、腕のナイフをクーロンの首に当てている
ブルーダー「頭は貰った!!」
東方不敗「ふん、ばかめ!!嵌められたのは自分だと気づかんか?!」
ブルーダー「何?!」
驚くブルーダー
[!!!!!!!!!!!!!!!!!]
その瞬間、大爆発を起こすクーロンガンダム
ブルーダー「なんとぉおお!!!」
その爆発に巻き込まれるシュピーゲル
東方不敗「どうだぁ!!」
爆炎の収まる中に立っている別のガンダムの影
東方不敗「ふむぅ………相当の実力の持ち主と見た………それゆえ一気に勝負をつけるが良策………とはいえ、ワシとしたことが自爆技とはな………」
シュピーゲルらしき残骸を前にする影
その残骸を踏み躙る
東方不敗「まぁいい、ここは先を急ぐとする!」
炎の中に姿を消す影
影は《マスターガンダム》である
その影が完全に去った後に、姿を現すシュピーゲル
ブルーダー「ゲルマン忍法………隠形の術………」
× × ×
〜現在〜
ビスマルクの残骸を漁っているシュピーゲル
その中で冷や汗を流すブルーダー
ブルーダー「流派東方不敗か………噂通りの恐ろしい使い手だ………果たして私のゲルマン忍法でどこまで戦えるのか?」
不安にかられるブルーダー
ブルーダー「そのためにも、使えるものは………」
戦艦の武器庫を開けるシュピーゲル
中には、さまざまな機関砲などが詰まっている
その中にあるガンダム用のサイドカー
ブルーダー「良いものがあったぞ………」
運び出そうとするブルーダー
ふと探査装置の反応に気づく
ブルーダー「これは??」
× × ×
コアランダーを分離し、着陸させるブルーダー
ブルーダー「確かに生命的な反応を探知したが………」
残骸の中に降り立ち、周囲を探知する
ブルーダー「いた!」
残骸を掘りどけるブルーダー
その下に半身が埋まった男の姿を発見する
ブルーダー「これは………我が国の同胞ではない………おい、生きているのか?!おい!!」
声をかけつつ、土中から救い出すブルーダー
だが次の瞬間、あまりの事に驚き手を離してしまう
ブルーダー「ぁぁぁぁぁぁぁぁ」
土中から引き摺り出した姿は、その腹部から下が無く、更に残された上半身からは機械がはみ出している
ブルーダー「な……なんだこれは???」
生きているように蠢く機械部分
男「う………ううう………」
ブルーダー「………生きているのか………??」
かすかに動く男
その顔に気づくブルーダー
ブルーダー「こ…この男は!!間違いない!!さっきのガンダムに乗ってた奴だ!!」
男は《キョウジ・カッシュ》である
続く……